なぜお金がないと人間は判断力を失い、危険な選択をするのか?
経済的不安がもたらす判断力の低下
お金が不足すると、私たちの脳は通常の判断力を失います。複数の研究によると、貧困状態に陥ると人はストレスによって「トンネルビジョン(視野狭窄)」に陥り、目先の問題解決だけに集中する傾向があります。結果として、長期的な視点を持つことができず、リスクの高い行動に走る可能性が高まります。
プリンストン大学の研究(Mani et al., 2013)によれば、経済的ストレスに直面していると、知能指数(IQ)は一時的に低下するという結果が得られています。これは、資金不足による不安が脳のリソースを消費し、複雑な問題への対応力を鈍らせるためです。
1「闇バイト」に手を出す理由:即金への誘惑
経済的に追い詰められた状況下で、人は合法的な手段ではなく、危険な「闇バイト」に手を出すことがあります。闇バイトとは、犯罪行為に関与するバイトのことで、短期間で高額の報酬を得られることが売り文句です。
日本でも「特殊詐欺」の受け子や、配送業務の名目で違法薬物の運搬に関わるケースが増加しています。SNSで簡単に募集がかかるため、追い詰められた若者が安易に応募し、犯罪組織に巻き込まれてしまうことも珍しくありません。
短期的にお金を手に入れるという誘惑は、特に借金や生活費の不足に直面した人々にとって強力です。「どうせバレない」という甘い認識のもとで、将来のリスクよりも即金の魅力が優先されてしまうのです。
2 宝くじやギャンブル依存の心理メカニズム
お金がない状況では、宝くじやギャンブルといった「一発逆転」の手段に依存することも多く見られます。経済的に困窮するほど、非現実的な期待にすがる心理が働きます。例えば、宝くじの当選確率が極めて低いことは多くの人が知っているにもかかわらず、「いつかは自分が」と希望を抱いて購入し続ける人がいます。
ギャンブル依存症は、脳の報酬系が過剰に刺激されることで生じます。一度大きな当たりを経験すると、その快感を求めて繰り返しギャンブルをするようになり、やめられなくなります。これは「損失回避バイアス」にも関係しています。損失を取り返そうとする心理が働き、借金を重ねてもギャンブルを続けてしまうのです。
「お金がないこと」が脳に与えるストレスの科学的根拠
経済的困窮は、単に生活水準を下げるだけでなく、脳にも直接的な影響を与えます。慢性的なストレスは、コルチゾールというホルモンを過剰に分泌させ、思考の柔軟性を失わせます。その結果、感情的な決断や短絡的な行動を取りやすくなります。
さらに、貧困は「自己コントロール力」を低下させることもわかっています。ある研究によれば、低所得者層の人々は、収入が不安定なため、計画的な行動を取りにくくなるといいます。そのため、健康的な生活や自己投資を優先するよりも、短期的な満足を得られる行為に走る傾向が強まります。
お金のない人が危険な選択に走るメカニズムとは?
お金がない人がリスクの高い選択に走る理由は、複雑な心理的要因が絡み合っています。具体的なメカニズムとして、以下の点が挙げられます。
1. 目先の利益を優先する「現金至上主義」
経済的に困窮していると、将来の利益よりも目の前のお金を優先する傾向が強くなります。これにより、闇バイトや危険な投資に手を出しやすくなります。
2. 選択肢の制限が判断を狂わせる
お金がないと、選択肢が狭まり、正常な判断ができなくなります。安易な借金や犯罪的な行為への関与も、「ほかに道がない」と思い込むことが原因です。
3. 社会からの孤立感がリスク行動を促す
経済的に困窮している人は、社会的なつながりが弱くなりがちです。孤立感が募ると、正しい助けを求める力も失われ、反社会的行動に走りやすくなります。
4. 衝動的な行動が増える
脳がストレスに晒されることで、抑制力が低下し、衝動的な行動を取るリスクが高まります。闇バイトやギャンブルへの参加も、その一環と考えられます。
5. 自己評価の低下がさらなるリスクを招く
お金がないことで自己評価が下がり、「自分には価値がない」という感覚に陥りやすくなります。この状態は、リスクの高い行動への抵抗力を弱め、問題をさらに深刻化させます。
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まとめ
お金がない状態は、人間の判断力を奪い、リスクの高い選択を取らせる要因となります。「闇バイト」やギャンブルへの依存は、その結果として発生する代表的なケースです。貧困から抜け出すためには、経済的な支援や教育だけでなく、社会的なつながりを維持し、精神的な安定を保つことも重要です。
このような状況に陥らないためには、困難な状況でも冷静な判断を保ち、周囲の支援を受け入れる力が求められます。短期的な満足に惑わされず、長期的な視点で人生を設計することが、最も効果的な対策といえるでしょう。
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