【2024年版】ADHDは1種類ではない!ダニエル・エイメン博士が解説する7つのタイプと治療法

ADHDは7つのタイプがある

はじめに:ADHDの誤解を解く

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、多くの人にとって「落ち着きがない」「集中できない」などの単一の症状で理解されがちです。しかし、精神科医で脳画像診断の専門家であるダニエル・エイメン博士は、ADHDが一様な病気ではなく、7つの異なるタイプに分かれることを主張しています。この記事では、エイメン博士の研究を基に、SPECTスキャンを用いた脳画像診断の結果から導き出された各タイプの特徴と、それぞれに最適な治療法を解説します。


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「もし、あなたやあなたの子どもがADHDに苦しんでいるなら、
この本をあなたの本棚に置くべきだ。
勇気と希望を与えてくれるだろう」
(マイケル・トンプソン博士:
ニューヨークタイムズ・ベストセラー『Raising Cain』の共著者)。

ADHDの7つのタイプとは?

エイメン博士は、ADHDがさまざまな脳の部位に関連する問題により異なる症状を引き起こすことを発見しました。それにより、治療も一律ではなく、個別のアプローチが必要です。以下が7つのタイプの概要です。

クラシック型 ADHD

  • 主な症状:集中力の低下、多動、衝動性
  • 脳の状態:前頭葉の血流が低下
  • 治療例:刺激剤(メチルフェニデートなど)、行動療法

    不注意型 ADHD

    • 主な症状:集中できない、物事に興味を持ちづらい、忘れっぽい
    • 脳の状態:前頭葉の活動が低下
    • 治療例:非刺激剤(アトモキセチンなど)、カウンセリング

    過集中型 ADHD

    • 主な症状:切り替えが苦手、こだわりが強い、頑固
    • 脳の状態:前頭葉と前帯状皮質の過剰活動
    • 治療例:SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、認知行動療法

    辺縁系型 ADHD

    • 主な症状:気分の浮き沈み、否定的思考、自己評価が低い
    • 脳の状態:辺縁系の過剰活動
    • 治療例:抗うつ薬、カウンセリング

    暴発型 ADHD

    • 主な症状:怒りっぽい、衝動的な行動を抑えられない
    • 脳の状態:側頭葉の活動異常
    • 治療例:抗てんかん薬、行動療法

    不安型 ADHD

    • 主な症状:不安が強い、緊張しやすい、完璧を求める
    • 脳の状態:前頭葉と辺縁系の同時過剰活動
    • 治療例:抗不安薬、リラクゼーション療法

    混合型 ADHD

    • 主な症状:複数の症状が重なる(不注意、多動、不安など)
    • 脳の状態:複数の領域にわたる不均衡な活動
    • 治療例:複数の治療法の組み合わせ(薬物療法+行動療法など)

      SPECTスキャンによる診断の重要性

      従来のADHD診断は、アンケートや観察による判断が主流でした。しかし、エイメン博士は脳血流を観察できる**SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)**スキャンを用いることで、症状の背後にある脳の活動異常を特定しました。この診断技術により、個々の患者に適した治療法を選択できる点が画期的です。
      研究によると、SPECTスキャンを用いた診断で治療効果が向上したケースが多く報告されています(Amen, 2013)。また、特に混合型ADHDの患者において、複数の治療を組み合わせたアプローチが効果的であることが確認されています。

      なぜ個別の治療が必要か?

      ADHD治療の難しさは、その多様な症状にあります。一律の薬物療法では一部の患者にしか効果がなく、副作用が問題となることもあります。たとえば、不安型の患者に刺激剤を処方すると、不安が悪化するケースがあります。そのため、脳画像診断を基にした個別治療が鍵となります。


      エイメン博士のクリニックでは、脳画像診断と患者の生活環境を考慮しながら、以下のようなカスタマイズされた治療を提供しています。

      • 不安型ADHDの患者には、リラクゼーション療法やヨガを取り入れる。
      • 過集中型ADHDの患者には、認知行動療法と薬物療法を組み合わせる。

      日本におけるADHD診断と治療への影響

      日本でもADHDに対する理解は進んでいますが、SPECTスキャンの導入はまだ一般的ではありません。国内の診断は主に面接と質問票に依存しており、複雑なタイプのADHDを正確に見極めるのが難しい状況です。しかし、エイメン博士の研究は、日本の医療現場にも新たな視点を提供する可能性があります。

      • 診断精度を向上させるために、SPECTスキャンの導入を推進する。
      • 医師やカウンセラーが、ADHDの多様なタイプについて研修を受ける。

      ADHD患者が直面する日常の課題と対策

      ADHD患者は、日常生活でもさまざまな困難に直面します。例えば、不注意型の人は仕事の締め切りを守れないことが多く、過集中型の人は人間関係が悪化しがちです。こうした問題に対して、次のような生活習慣の改善が効果的です。

      • タスク管理アプリの活用:複数の予定を一元管理し、リマインダーで締め切りを忘れないようにする。
      • 瞑想やマインドフルネス:集中力を高め、不安を軽減する。
      • 運動習慣をつける:有酸素運動は脳の血流を促進し、注意力を向上させる効果がある。

      まとめ:ADHDを正しく理解し、適切な治療を受けるために

      ADHDは単なる「落ち着きのなさ」ではなく、複雑な脳のメカニズムに起因する多様な症状が存在します。エイメン博士の提唱する7つのタイプは、従来の「一律な治療」から脱却し、個別のアプローチが必要であることを示しています。日本においても、SPECTスキャンの導入や新しい治療法への理解が進むことが望まれます。

      ADHDに悩む人が正しい診断と治療を受け、日常生活の質を向上させるためには、医療者と患者の協力が不可欠です。まずは自分の症状を理解し、必要なサポートを受けることから始めましょう。


      参考文献

      • Amen, D. G. (2013). Healing ADD: The Breakthrough Program that Allows You to See and Heal the 7 Types of ADD.
      • 日本精神神経学会 (2020). ADHD診断・治療ガイドライン.
      • World Psychiatry. (2017). Advances in ADHD research and treatment: New perspectives and interventions.
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