読書教育の常識に疑問を持つ瞬間
子供に読書習慣を身につけさせたい──。親なら一度はそう思うのではないだろうか。学校では読み聞かせを推奨し、教育の現場では「親の読書習慣が子供に影響を与える」と言われる。しかし、実際に親が熱心に本を読んでも、その熱が子供に伝わらないことがある。「親がどんなに読書好きでも、子供が本に興味を示さない」この現実を目の当たりにしたとき、私は一つの疑問を抱いた。
本を読むかどうかに本当に必要なものは、親の努力なのだろうか?それとももっとシンプルで環境的な要因が鍵を握っているのだろうか?
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「興味があれば読む」は本当だった
子供の読書習慣について議論する中で、私が注目したのは次のシンプルな仮説だった。
「興味ある子供は勝手に読むし、興味ない子供は読まない」
これは一見冷たいようにも聞こえる。しかし、考えてみれば至極当然のことではないだろうか。例えば、親が子供にいくら楽器の練習を強要しても、音楽そのものに興味がない子供は上達しない。同じように、本を読むこと自体に興味がある子供は、周囲の環境次第で自然と本を手に取る。
この仮説を裏付けるデータもある。
ある研究では、読書習慣を持つ子供の多くが、家庭内に多くの本がある環境で育ったことが明らかになっている。特にヨーロッパの調査では、家庭に200冊以上の本がある子供は、学力が高い傾向にあるという。興味深いのは、親が本を読むかどうかよりも「物理的に本が家にあるかどうか」が読書習慣形成に大きく影響を与えている点だ。
「手元にない本は読めない」という当たり前
この議論の核心にあるのは、シンプルな事実だ。
「手元にない本は読めない」
いくら本を読むことを推奨しても、子供の目に入らない場所に本があれば、それは存在しないも同然だ。ある教育評論家が述べたように、「読書環境を作ることは、子供が自然に本を手に取る可能性を広げることだ」。つまり、子供に本を与えるのではなく、読書が当たり前の環境を整えることが重要だということだ。
私自身の経験を振り返ってもそうだ。家に本が溢れている環境で育った私は、特に親が読書を強要することもなく自然と本を読むようになった。一方で、友人の家庭では、親が熱心に本を読んでいたが、家自体にはあまり本がなかった。その友人は大人になっても読書を習慣にすることはなかった。
親の読書習慣より「物量」が重要
ここで注目すべきは、親の読書量や読み聞かせの頻度ではなく、「本そのものが子供の生活空間に存在すること」だ。これは、以下のような心理的な効果を生む。
- 偶然の出会いが生まれる
本が目に入る環境では、興味を引くタイトルや表紙との出会いが自然に増える。特に幼い頃は、読書のきっかけは「なんとなく手に取った」から始まることが多い。 - 選択肢が広がる
ジャンルの異なる本が多いほど、子供は自分の興味に合ったものを見つけやすい。図鑑や冒険小説、詩集など、種類が多ければ多いほど、自分にとって特別な一冊に出会う確率も高まる。 - 親の努力が目立たない
読書を強制されると、子供は逆に反発することがある。しかし、環境として自然に本が存在していれば、読書は「親からの指示」ではなく「自分で選んだ行動」と感じやすい。
実際の事例に見る「本がある環境」の力
この考え方を象徴するエピソードとして、ある作家の子供時代の話が挙げられる。彼の家庭では、両親ともに本をあまり読まなかったが、家には古本屋で買った本がたくさんあった。
「家に何百冊も本があった。それが僕にとっての遊び道具だった」
この作家は親の期待を背負うことなく、自然と読書を楽しむようになり、結果として物書きの道を選んだという。このエピソードは、「本が多い環境にいることが、読書好きな子供を育てる鍵である」ことを物語っている。
「本を読む子供」を育てるための視点
親としてできることは何だろうか?それは、子供が「読める」環境を用意することに尽きる。
本の購入に費用をかけるのが難しい場合でも、公共図書館を活用する手段もある。特に日本では、図書館が全国に整備されており、ほとんどの地域で無料で本を借りることができる。こうしたインフラを利用し、子供の生活空間に本を「増やす」ことが重要だ。
結論:子供は「環境」に育てられる
読書好きな子供を育てたいという親心は理解できるが、読書教育に力を入れすぎる必要はない。大切なのは、子供が本と出会える環境を作ることだ。本が溢れる家庭で育てば、子供は自然と読書に親しむようになる。
「手元にない本は読めない」。この当たり前の事実を再認識し、子供が本と出会える可能性を広げる環境を整えよう。それが、読書好きな子供を育てる最もシンプルで確実な方法なのだから。
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