多動傾向(ADHD)の人が見つけた最強の習慣
1. 多動な脳と戦う日々
ある日、友人が言った。「すごいスピードで喋るよな」。その言葉にハッとした。確かに、自分の頭の中は常に思考で満員電車状態だ。次々とアイデアが湧いてくる。でも、そのスピード感に振り回され、肝心の行動が伴わないこともしばしば。仕事の締め切り、忘れていた約束、そして中途半端に放置されたプロジェクトたち。
多動傾向の人(いわゆるADHDタイプ)の脳は、デフォルトで「同時多発的に発生する思考の渦」に巻き込まれているらしい。ある専門書で読んだ話だが、こういうタイプの人間は考える速度が速い反面、それを整理するスキルを後天的に習得しないと、頭の中で迷子になるらしい。言われてみれば納得だ。自分もその一人だろう。
「もし、あなたやあなたの子どもがADHDに苦しんでいるなら、
この本をあなたの本棚に置くべきだ。
勇気と希望を与えてくれるだろう」
(マイケル・トンプソン博士:
ニューヨークタイムズ・ベストセラー『Raising Cain』の共著者)。
2. “書き出す”ことで見えたもの
あるとき、ふと気づいた。頭の中のアイデアを全部書き出してみたらどうだろう、と。それは大学ノートの隅に適当に落書きするような、軽い思いつきから始まった。「忘れるくらいなら、とりあえずメモだ」。
その結果、何が起こったか。書き出すことで脳が軽くなるのだ。目に見える形にしてみると、自分の思考を客観的に眺められる。「あれ、こんな単純なことで悩んでたのか」と気づくこともあれば、「これはあとで重要になるアイデアだな」とすぐに仕分けができる。
ここで重要なのは、すべてを“とりあえず書き出す”ことだ。躊躇してはいけない。人に見せるものではないのだから、完璧な文章である必要もない。「何を書くべきか」ではなく、「何を書きたいか」に素直になるのだ。
3. 科学的な裏付け:書き出しが脳に与える効果
科学者たちは、書くという行為が脳に与えるポジティブな影響について研究を進めている。心理学者の研究によれば、書く行為は脳の前頭前皮質を活性化し、感情の整理や意思決定を助けるという。また、ADHDに関するある研究では、思考を可視化することで注意散漫を軽減し、タスクの優先順位をつけやすくなることが示されている。
自分自身もその効果を実感した。頭の中で散らかっていたものが、ノートやスマホのメモに整然と並ぶだけで、次の行動がスムーズに進む。仕事の締め切りに追われた時期、朝一番に「今日やるべきこと」を箇条書きにしただけで、一日が圧倒的に効率よく回ったのを今でも覚えている。
4. 多動傾向の人が行動を起こすためのコツ
「書き出すだけでいいの?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、それだけでは不十分だ。多動傾向の人にとっては、書いた後の行動こそが最重要だ。ここで有効だったのが、「備忘」「アイデア」「行動対象」の3つに分ける方法だ。
- 備忘:忘れてもいい内容は、すぐにアプリや手帳に転記。これで無駄なストレスを減らせる。
- アイデア:自分の中で「これは面白い!」と思ったものは、後から取り出せるようにきちんと保管。
- 行動対象:書いたそばから即行動に移すもの。これが結果を生む第一歩だ。
この仕分けを習慣化するだけで、脳内の雑音は驚くほど減る。
5. ユーモアの力で自分を許す
とはいえ、完璧にやろうと思うと疲れてしまうのも、多動傾向の人間の特徴だ。あれもこれも完璧にやりたいという欲が出てきて、結局疲れて動けなくなるのだ。そんなときは、自分に対してユーモアを持つことが重要だ。
ある日、「メモ帳にこんなこと書いてたのか」と笑ったことがある。「パン屋で人生相談」って何だ? 自分でも意味不明なことを書き留めていた。でも、そんなものだ。真面目なアイデアも、思いつきの妄想も、全部が自分の一部なのだ。
6. まとめ:脳内カオスを味方に変える
多動傾向のある人は、自分の思考のスピードや多さに振り回されがちだ。でも、それを“味方”に変えることは可能だ。その第一歩が、脳内の思考をすべて書き出すこと。この単純な行動が、人生の効率と質を劇的に変える鍵になる。
忘れっぽいことも、気が散りやすいことも、アイデアが多すぎることも、全部があなたの強みだ。それを形にするために、まずは一枚の紙とペンを手に取ってみてほしい。
書き出すことで、人生が変わる。これだけは確信している。
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