クールキャラは出世できない
アニメのヒーローと現実のギャップ
子どもの頃、テレビで見たアニメのヒーローたちはいつもクールだった。『ONE PIECE』のゾロは寡黙で頼りになるし、『SLAM DUNK』の流川は感情をあまり見せないバスケットボールの天才。彼らは口数少なく、行動で全てを語る。その姿に憧れた私は、いつしか「クールな自分」でいることが正しいと思い込むようになった。
学校でも、感情を表に出すのはダサいと感じ、必要最低限の言葉でコミュニケーションを済ませていた。「余計なことを話さず、ただ結果を出せばいい。」その思考は、社会人になっても変わらなかった。
でも、現実は違った。職場での評価は、アニメのようにはいかなかったのだ。
現実社会の評価基準は違う
社会に出てわかったのは、クールな振る舞いよりも“人間味”が評価されるということ。仕事ができるだけではなく、素直で愛嬌があって、一生懸命な姿勢が求められる。たとえ少し抜けていても、それが「人間らしさ」として受け入れられるのだ。
思い返せば、社内で信頼されている先輩たちは、みな気さくで話しやすい人たちばかりだった。決して“クール”ではないが、飲み会で冗談を飛ばし、困ったときはすぐに助けてくれる。そんな人たちが出世している理由がようやく理解できた。
クールキャラに逃げていた過去
私は昔、仕事でもプライベートでも感情をあまり表に出さず、必要最低限のコミュニケーションだけで済ませる“クールキャラ”を装っていた。それは「弱みを見せたくない」という気持ちの裏返しだった。
でも、あるとき上司に言われた一言が胸に刺さった。「君はもっと周りに頼っていいし、笑ったり悩んだりしていいんだよ。」
その瞬間、私は気づいた。クールでいることで自分を守っていたつもりが、逆に孤立していたのだと。
素直さと人間味が武器になる
それからは少しずつ、自分をさらけ出すよう心がけた。仕事でわからないことがあれば素直に聞く。失敗したときは潔く謝る。そして、飲み会で質問されるのを待つのではなく、どんどん質問してみた。すると、周囲の反応が驚くほど変わった。
「君って意外と面白いね」「もっと相談してくれていいのに」
そんな言葉をもらえるようになり、職場での信頼感も自然と高まっていった。
人間が人間を評価する世界
社会は結局、人間同士の関わりで成り立っている。どれだけ仕事ができても、人間的な魅力がなければ評価されにくいのだ。
だからこそ、周りとの関係を大切にしよう。笑顔、素直さ、一生懸命さ。少しの抜けどころがあることで、人はもっと親しみを感じてくれる。
心の壁を壊す勇気
それでも、自分をさらけ出すことには怖さがある。失敗したらどうしよう、変に思われたらどうしよう──そう考えるのは当然だ。だが、その恐れを乗り越えた先には、思いがけない出会いや助けが待っている。
仕事で困っているとき、何気なく「助けてください」と声をかけたら、思わぬ同僚が親身になってくれた。何か失敗してしまったとき、「気にしないで。次頑張ればいいよ」と言ってくれる仲間がいた。
そんな経験を積むうちに、私は少しずつ心を開くことに慣れていった。
自分の価値を見直す
クールキャラを捨て、人間らしい自分をさらけ出すことで、初めて本当の自分の価値が見えてきた。「できる自分」ではなく、「人間らしい自分」が周囲に受け入れられたとき、自分を肯定する力が生まれたのだ。
社会は数字だけでは動かない。評価するのは機械ではなく、同じ人間だ。だからこそ、自分の弱さを見せることを恐れず、笑ったり、泣いたり、失敗したりしながら生きていこう。
現実社会では、クールなキャラよりも“愛されキャラ”のほうが強い。だからこそ、自分を守るための殻を破り、もっと人間らしく振る舞うことを恐れないでほしい。それが、私が“クールキャラ”を捨てて得た最大の気づきだった。
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