ハーバード・ビジネス・スクールが営業を教えないワケ
はじめに
ビジネスの成功において「営業(セールス)」は欠かせないスキルである。しかし、世界最高峰のビジネススクールであるハーバード・ビジネス・スクール(HBS)では、営業を専門的に教えるカリキュラムが存在しない。この事実に驚く人も多いだろう。
フィリップ・デルヴス・ブロートンの著書『なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?』では、この疑問に対する深い考察がなされている。実際のところ、HBSはなぜ営業を教えないのか? 本記事では、その理由を探り、営業の重要性とMBA教育との関係について詳しく解説する。
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ハーバード・ビジネス・スクールとは?
世界最高峰のビジネススクール
ハーバード・ビジネス・スクール(Harvard Business School、以下HBS)は、1908年に設立されたアメリカ・マサチューセッツ州ボストンにあるビジネススクールだ。MBA(経営学修士)の最高峰として知られ、多くの著名なビジネスリーダーを輩出している。
HBSの教育はケースメソッド(実際の企業のケースを基にしたディスカッション形式の授業)を特徴としており、理論だけでなく実践的なビジネススキルの習得を重視している。しかし、そのカリキュラムの中には「営業」を専門的に学ぶ授業はほぼ存在しない。
HBSの卒業生には、多くのCEOや起業家が名を連ねており、ビジネス界における影響力は絶大だ。しかし、それでも営業に関する教育が十分に行われていないというのは不思議に思える。
HBSの教育方針と営業の不在
HBSでは、リーダーシップや経営戦略、マーケティングといった分野に重点を置いている。ケースメソッドによる教育は、現実の企業経営に関する判断力を養うことを目的としており、営業という実務レベルのスキルよりも、より大局的な視点を持つことが求められる。
実際、HBSのカリキュラムには「マーケティング戦略」は存在するものの、「営業戦略」について詳細に扱う講義はほぼ存在しない。そのため、営業は学ぶのではなく、現場で習得するものと位置づけられている。
営業がMBAカリキュラムに含まれない理由
1. 営業は理論より実践が重要
営業は、単なる理論ではなく、実際の顧客との対話や交渉、関係構築が重要なスキルである。HBSのようなMBAプログラムでは、財務、マーケティング、戦略といった理論的な学問が重視される傾向にあり、実際に顧客と向き合う営業のスキルは「現場で学ぶもの」とされる。
営業のスキルは、単なるロジックや理論ではなく、経験を通じて磨かれるものだ。例えば、顧客の心理を理解し、適切なタイミングでアプローチをかけることは、実際の商談経験を通じてしか習得できない。書籍や講義で学ぶことはできても、それだけで実際に営業の成果を上げることは難しい。
2. MBA生が営業を避ける傾向がある
HBSの学生の多くは、戦略コンサルティングや投資銀行など、エリートキャリアに進むことを志望している。これらの職種では営業のような「直接的な売り込み」よりも、データ分析や経営戦略の立案といったスキルが重視される。そのため、営業を学ぶことに対して積極的な関心を持つ学生が少ないという事情もある。
実際、HBSの教授であるハワード・アンダーソンは「営業は、結果が測れる唯一の分野だ。それがMBAの学生には死ぬほど恐ろしいんだよ」と指摘している。営業は売上という明確な成果を求められるため、失敗がすぐに分かる。この厳しさを避けたいと考える学生も多いのだ。
3. 営業の成功は個人の資質に依存する
営業のスキルは、理論的に学べる部分もあるが、大部分は個々の経験や人間性に依存する。カリスマ性のある営業マンもいれば、論理的な説明が得意な営業マンもいるように、一人ひとりに合ったスタイルが存在する。そのため、画一的なカリキュラムで教えるのが難しいと考えられている。
また、営業の現場では、顧客との信頼関係の構築が重要であり、それには時間と経験が必要だ。MBAプログラムの短期間では、こうした長期的なスキルを十分に習得するのは難しいという側面もある。
まとめ:営業を学ぶことの重要性
HBSが営業を教えない背景には、理論よりも実践が重要であること、MBA生が営業を敬遠しがちであること、そして営業が個人の資質に依存することが挙げられる。しかし、実際のビジネスにおいては営業スキルが極めて重要であり、どんな分野でも求められるスキルである。
HBSを卒業しても、多くの人が営業の重要性に気づき、現場で学び直している。つまり、ビジネスの成功には営業のスキルを磨くことが不可欠なのだ。
営業を学ぶことは、MBAだけでは得られない実践的な知識を身につけることにつながる。これからビジネスの世界に飛び込む人は、営業を学ぶことを避けず、積極的に挑戦することをおすすめしたい。
また、営業を学びたい人は、実際の営業経験を積むことが最も効果的だ。インターンシップやアルバイトを通じて顧客と接する機会を作り、リアルなフィードバックを受けながらスキルを磨くことが重要である。
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