PDCAは完璧を目指すな?アメリカ流ビジネスの『まず撃つ』哲学を学ぶ

PDCAは完璧を目指すな?

先日、あるアメリカ人経営者と話しているときに、非常に印象深い言葉を耳にしました。彼は「日本人はPDCAのPばかりに集中している」と言い、射撃に例えてこう続けました。「自分たちはまず一発撃ってみる。それでどちらにそれたのかを確認してから、次の一手を打つんだ。日本人は撃つ前に風向きや気温などを調べることに夢中になり、なかなか引き金を引かない」。言葉に痛みを感じながらも、その指摘には大いに納得させられました。私たちは、どうしても「完璧な計画」を追い求め、行動を起こすまでに時間をかけすぎてしまうのではないでしょうか。この「まず撃つ」哲学から学ぶべきものは多くありそうです。

PDCAは「完璧」を目指すべきものなのか?

PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)は、1950年代にデミング博士が提唱した業務改善の手法として知られています。特に日本企業では、PDCAの「Plan(計画)」段階に非常に力を入れる傾向があり、綿密な計画を立ててから行動に移すのが一般的です。しかし、アメリカ人経営者の指摘の通り、計画に時間をかけすぎて「Do(実行)」が遅れることもしばしば。これは、変化が速い現代のビジネス環境において大きなリスクとなります。

アメリカでは、ビジネスのスピード感が重視されることが多く、完璧な計画よりも、迅速な行動とその後の調整が重要視されます。例えば、GoogleやFacebookなどのシリコンバレー企業は、「MVP(Minimum Viable Product)」と呼ばれる、最低限の機能を持った製品を早期に市場に投入し、ユーザーからのフィードバックを基に改善を進めていく手法を多用しています。これは「まず撃ってみる」アプローチに通じるもので、成功を収めた企業が多数存在します。

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著者: 冨田和成

PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(検証)、ACTION(調整)の4ステップからなるPDCAサイクルは、ビジネスパーソンであれば誰もが知る古典的なフレームワークだ。

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アメリカ人経営者の「まず撃つ」哲学とは

先日会ったアメリカ人経営者は、「まず撃って、そこから調整する」という考え方を強調していました。彼の言葉を借りると、射撃に例えて「日本人は風向きや気温を調べて完璧に準備を整えてから撃とうとするが、自分たちはとにかく一発撃ってみる。どこに飛んでいったのかを確認してから、2発目、3発目で修正するんだ」ということでした。

このアプローチは、アメリカのスタートアップ文化や企業の素早い成長に多く見られます。Amazon創業者のジェフ・ベゾスは、「成功するためには実験と失敗が不可欠だ」と語り、失敗を恐れずに素早く行動し、改善を繰り返す姿勢を貫いています。これがAmazonの急速な成長の一因でもあります。

日本企業にも変化の兆し

一方で、日本でもこの「まず撃ってみる」アプローチを取り入れる企業が増えてきました。例えば、楽天やソフトバンクのような企業は、アジャイル開発やリーンスタートアップの手法を導入し、プロジェクトを小さなステップで進めながら、市場の変化に対応しています。特にIT業界では、計画に時間をかけすぎると市場の動向に追いつけなくなるため、スピードを重視したアプローチが重要視されるようになってきています。

とはいえ、製造業などの伝統的な業界では、PDCAの「P」に重きを置く文化が根強く残っています。このバランスをどのように取るかが、今後の日本企業にとっての課題となるでしょう。

「まず撃つ」アプローチをどう実践するか?

では、この「まず撃つ」アプローチを日本のビジネスにどう取り入れることができるでしょうか?

  1. 完璧な計画を目指さない
    完璧な計画を立てることにこだわらず、一定の方向性が決まったらすぐに行動に移す勇気が必要です。失敗を前提とし、失敗から学ぶことで次のステップを改善していく姿勢が重要です。
  2. フィードバックループを短くする
    行動を起こした後、結果をすぐに確認し、必要に応じて軌道修正をする。これを何度も繰り返すことで、より良い結果を早期に得ることができます。Googleが行う「A/Bテスト」のように、小さな実験を繰り返し、最適な解を見つけていくことが求められます。
  3. 失敗を恐れずにチャレンジする文化を育てる
    失敗が避けられないものであると認識し、それを責めない文化を築くことが、企業の成長にとって不可欠です。アメリカの多くの企業が失敗を学びの一環と捉えているのに対し、日本ではまだ失敗をネガティブに捉える傾向があります。この意識を変えることが、革新的なアイデアやビジネスモデルの創出につながるでしょう。

結論:PDCAの新しい使い方を模索する

PDCAは、日本企業が長年にわたり活用してきた優れた手法です。しかし、時代が進むにつれて、行動を遅らせる要因にもなり得ます。特に変化の激しい現代においては、完璧な計画を求めるよりも、まず一発撃ち、そこから学び、調整していくアプローチが重要です。失敗を恐れずに迅速に行動し、その結果から学びを得ることが、これからのビジネスで成功するための鍵となるでしょう。

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