「NO」が言えない人々

なぜ「NO」が言えないのか？

あなたは頼まれたことを断れず、無理をして引き受けてしまった経験がありませんか？「嫌だ」と言いたくても言えず、自分を押し殺してしまう。その結果、心や体に負担を抱え、後になって自己嫌悪に陥る——こうした生きづらさを感じている人は少なくありません。

特にアダルトチルドレンと呼ばれる人々にとって、この「断る」ことへの抵抗は幼少期の家庭環境に根ざしている場合が多いと言われています。親の期待や機嫌に左右され、自分の感情や意見を表に出すことを諦めてきた彼らは、大人になってもその影響から抜け出せないことが少なくありません。

この記事では、アダルトチルドレンが抱える「断れない」という課題に焦点を当て、その原因や影響、そして解決への道筋を探ります。「NO」と言うことの大切さを理解し、自分らしい生き方を取り戻すためのヒントを一緒に考えてみましょう。

アダルトチルドレンの教科書

親による虐待、発達障害、宗教２世、PTSD……多重当事者だからこそ書けた、物語形式によるアダルトチルドレンの回復メソッド。当事者研究、オープンダイアローグ的対話実践で、自分なりのメソッドを発見してください。

楽天で見る→

Amazonで見る→

アダルトチルドレンとは？

アダルトチルドレン（Adult Children of Alcoholicsなど、略してAC）は、幼少期に機能不全家族で育ち、大人になってもその影響が続く人々を指します。この概念は、当初はアルコール依存症の親を持つ子どもたちに対して使われましたが、現在では幅広い家庭環境の問題に関連づけられています。例えば、親の感情の起伏に振り回されたり、自分の気持ちよりも親の期待を優先するよう育てられた場合も該当します。

こうした環境で育った人々は、幼い頃から「親の機嫌を損ねないこと」が最優先となり、自分の感情や欲求を抑えることを学んできました。その結果、大人になっても「嫌だ」と言えず、自己主張に対して強い罪悪感を抱くことが少なくありません。

「嫌だ」と言えない理由

アダルトチルドレンの人々が「嫌だ」と言えない理由は主に以下の点に起因します。

罪悪感の植え付け
幼少期に「親に迷惑をかけてはいけない」「期待に応えないと愛されない」と教え込まれた結果、「断ることは相手を傷つける」と信じ込むようになります。
自己評価の低さ
親の愛情が条件付きだった場合、自分の価値を感じるために他人の評価を必要とする傾向が強くなります。そのため、「嫌だ」と断ることで評価が下がることを恐れ、無理な要求でも引き受けてしまうのです。
対人関係への不安
「嫌だ」と言うことで関係が悪化するのではないかという不安がつきまとい、自分の気持ちを表に出すことができなくなります。

「断れない」生き方がもたらす影響

「嫌だ」と言えない生き方は、心身に多大な負担をかけます。以下にその影響を挙げます。

過剰なストレス
無理な要求を断れないことで、仕事や人間関係においてストレスが蓄積します。このストレスが心身の不調を招くこともあります。
自己喪失
自分の感情や欲求を押し殺すことで「本当の自分」が見えなくなり、人生に対する充実感や満足感を感じられなくなります。
対人関係の悪循環
自己主張をしないことで相手に利用される関係が続き、結果的に対人関係がさらにストレスフルなものになる場合があります。

「嫌だ」と言うことは悪いことではない

「嫌だ」と言うことに対して罪悪感を感じる人は多いですが、それは決して悪いことではありません。むしろ、自分を守るための大切な行為です。

自己主張は自己防衛
「嫌だ」と言うことは、自分の時間やエネルギー、感情を守るための手段です。自己主張することで、自分自身の価値を尊重し、他者にもその価値を認識させることができます。
健康的な境界線の確立
断ることは、他者と自分の間に健康的な境界線を引くことにもつながります。これにより、対人関係がより健全なものとなり、自分らしい生き方を追求できるようになります。

「嫌だ」と言う練習を始めよう

自己主張が苦手な人でも、小さなステップから「嫌だ」と言う練習を始めることが可能です。

簡単な状況で練習する
まずは親しい友人や家族との会話の中で、軽い提案に対して「嫌だ」と言う練習をしてみましょう。例えば、「今日これをやりたくない」と伝えるだけでも大きな進歩です。
自分の感情に気づく
断るためには、まず自分が何を感じているのかに気づくことが大切です。心の中で「自分は本当にこれをやりたいのか？」と問いかけてみてください。
断るフレーズを準備する
「申し訳ないけど、今回はできません」「今は自分の時間が必要なんです」といったフレーズをあらかじめ用意しておくと、スムーズに断ることができます。