SNSにはびこる「自信満々なバカ」問題
X(旧Twitter)を開くたびに思う。
「なんでこんなに自信満々なヤツが多いんだ?」
自分の知識や経験に一片の疑いも持たず、堂々と断言する人たち。誤情報を拡散しているのに、なぜか本人は微塵も動じない。専門家の指摘すら「それはお前の意見だろ?」とバッサリ。反論しても、論理的な議論にはならず、「わかってないね」と決めつけられる。
一方で、勉強熱心な人や慎重に考える人ほど、SNSでは言葉を選び、慎重に発信する。彼らは自分の知識に対して「これで本当に合っているのか?」と自問自答を繰り返す。結果、「バカほど自信満々で、賢い人ほど発言を控える」という現象が生まれる。
なぜこんなことが起こるのか? どう向き合えばいいのか? 今日はその理由を探りつつ、SNSの「自信満々なバカ」にどう対処するかを考えてみよう。
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ダニング=クルーガー効果──「知らない」ということを知らない人たち
この問題を考えるとき、心理学者ダニングとクルーガーが提唱した「ダニング=クルーガー効果」は避けて通れない。
簡単に説明すると、「能力が低い人ほど自分の能力を過大評価し、逆に能力が高い人ほど自分の能力を過小評価する」という認知バイアスのことだ。知識が少ない人は「自分がどれだけ知らないか」を認識できないため、「俺は物事をよく理解している」と思い込む。
例えば、数学を習い始めたばかりの子どもが「四則演算ができるから数学は簡単!」と言ってしまうようなものだ。一方で、高度な数学を学ぶほど「自分が知らないことの多さ」に気づき、謙虚になる。
SNSで堂々と誤情報を発信する人の多くは、まさにこの「知らないことを知らない」状態にある。そして、彼らが一度でもフォロワーから賞賛されたり、バズったりすると、「やっぱり俺は正しい」と確信を深めてしまうのだ。
「自信満々なバカ」はなぜ目立つのか?
ここで気になるのが、「なぜ賢い人よりも、バカのほうが目立つのか?」という問題だ。
その理由の一つに、SNSの特性がある。
SNSは「刺激が強いものほど拡散されやすい」という仕組みになっている。極端な意見や強い感情を持つ投稿のほうが、アルゴリズムに優遇され、多くの人の目に触れやすくなる。
例えば、「〇〇は絶対に嘘だ!」という投稿と、「〇〇にはこういう可能性もあるし、こういう解釈もできるよね」という投稿があった場合、拡散されるのは圧倒的に前者だ。人間は「断定的な意見」に引きつけられやすい。
さらに、SNSは「いいね」や「リツイート」で承認欲求を満たせる場だ。「自信満々なバカ」が堂々と発言し、それがバズることで、本人は「俺はすごい」とさらに確信を深める。そして、同じような人が集まり、エコーチェンバー(同じ考えの人だけが集まり、意見が偏る現象)が生まれる。
結果、慎重に考える人の意見はかき消され、「バカほど自信満々」という構図が出来上がる。
じゃあ、どう向き合えばいいのか?
この現象を知ったうえで、僕たちはどう向き合えばいいのか?
1. 「正しさ」より「影響力」を考える
SNSで正論をぶつけても、相手は変わらないことが多い。むしろ、「論破される→ますます意固地になる」という負のスパイラルに陥ることもある。
だからこそ、「自分の発言がどういう影響を与えるか」を意識するのが大事だ。単に「バカを論破する」のではなく、「見ている第三者がどう受け取るか」を考えて発言する。特に、若い世代や勉強中の人が誤情報に引っかからないように、冷静で論理的な発信を心がけることが重要だ。
2. SNSの「温度」を下げる
SNSは感情を煽る場になりがちだが、僕たちは意識的に温度を下げることができる。
例えば、
・「なるほど、そういう意見もあるのか」と一旦受け止める
・無駄に感情的にならない
・議論のための議論を避ける
こうした姿勢を取るだけで、無駄なストレスを減らせるし、自分自身がバカの側に回るリスクも減らせる。
3. 「知っていること」と「知らないこと」を分ける
僕たちもまた、完璧ではない。どれだけ勉強しても、知らないことは山ほどある。
だからこそ、「知っていること」と「知らないこと」をきちんと分けて考える習慣をつけるのが大切だ。「これは自信を持って言えるけど、ここから先は専門家の意見を聞いたほうがいいな」と自覚できるかどうかが、賢さの分かれ目になる。
結局、バカほど自信満々なのは変わらない。でも…
正直なところ、「バカほど自信満々」な現象がこの先なくなることはない。むしろ、SNSの仕組み上、今後も増えていく可能性すらある。
だけど、僕たちにできることもある。
・バカを論破するのではなく、正しい情報を冷静に発信する
・SNSの温度を下げ、感情的にならない
・「知らないことを知らない」状態に陥らないよう、自分を客観視する
これを意識するだけで、SNSとの付き合い方はずっと楽になる。そして何より、「自信満々なバカ」にイライラする時間が減る。
「なぜXではバカほど自信満々なのか?」という問いの答えはシンプルだ。「知らないことを知らないから」。でも、それを理解して、自分がそうならないように気をつけるだけでも、SNSの景色はちょっとだけ変わるはずだ。
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