【ネタバレなし】映画『ウィキッド ふたりの魔女』を観る前に押さえておくべきポイント

『ウィキッド ふたりの魔女』で押さえておくべきポイント

~作品の解像度をグッと上げる予習ガイド~

「ウィキッド、これから観るよ!」という人へ。
この映画、ちょっとミュージカルが好きな人やファンタジー好きな人なら「楽しい!」で終わるかもしれません。でも、実はその裏にはアメリカ社会の価値観や歴史的な文脈がゴリゴリに仕込まれているので、最低限いくつかのポイントを押さえておくと、作品の解像度が格段に上がります。

特に、**色(緑・エメラルド・ブロンド)**には重要な意味があります。
さらに余裕のある人は、黒・ピンク・黄色いレンガ道・ヤギもチェックしておくと「なるほど、そういうことか…」となるはず。

あと、これ2部作です!1本で完結しません!

それと、日本ではCMがちょっと子ども向けっぽいテンションで流れていますが、**「いや、これ全然子ども向けじゃない(真顔)」**ということも伝えておきます。社会風刺が強めなので、観終わった後に「これ、ファンタジー映画じゃなくて鳥獣戯画では…?」となる人も多いはず。

では、本題にいきます!



1. これだけは押さえておこう!「緑・エメラルド・ブロンド」の意味

緑(Green)=アウトサイダーの象徴

主人公エルファバの肌が緑色なのは、単なるファンタジー的なデザインではなく、「社会から疎外された者」の象徴です。

アメリカでは、緑は「異端」「異質」「危険」「変わり者」といったイメージを持たれることが多い色です。特に**『オズの魔法使い』の世界では、オズの国以外では緑色の肌の人間はいません**。このことが、エルファバが生まれつき差別される理由になっています。

現実世界で言うなら、緑は「移民」「LGBTQ+」「人種的マイノリティ」「社会的弱者」など、社会の中で『少数派』とされる人々のメタファーになっています。

エメラルド(Emerald)=権力と幻想

エメラルドは、オズの国の象徴的な色。オズの国の中心には「エメラルド・シティ」がありますが、これはアメリカの「ワシントンD.C.(政府・権力の象徴)」を連想させます。

ただし、エメラルドの色には「真実とは限らない」というニュアンスが含まれています。『オズの魔法使い』では、実はエメラルド・シティは「緑色のメガネをかけさせられているから緑に見えるだけ」というトリックがあるのですが、これは「権力はしばしば幻想によって成り立っている」ことを暗示しています。

ブロンドヘア(Blonde Hair)=社会的特権

ガリンダ(後のグリンダ)はブロンドヘアの美しい少女として描かれていますが、これは「白人・美人・富裕層」という社会的特権を示しています。

アメリカでは、金髪=美しさや特権の象徴として扱われることが多いです。つまり、ガリンダは「社会的に成功しやすい属性」を持っているキャラクターということ。

ただし、映画の中で彼女が直面する選択によって「本当に特権を持っている者は、それをどう使うべきか?」という問いが投げかけられます。

2. 余裕があれば押さえておくと面白いポイント

黒(Black)=魔女狩りと社会的抹殺

アメリカでは、黒は「悪」「死」「不吉」と結びつきがちです。歴史的には「魔女狩り」とも関連しており、特に1692年のセイラム魔女裁判(無実の女性たちが魔女とされ処刑された事件)が象徴的な出来事です。

エルファバが「西の悪い魔女」としてレッテルを貼られるのは、まさにこの魔女狩り的な構造を持っています。彼女は実際には「悪」ではないのに、社会的に排除されてしまうのです。

ピンク(Pink)=表面的な幸福と欺瞞

ガリンダがよく着るピンクは、典型的な「少女らしさ」や「可愛らしさ」の象徴です。ピンクは「幸せ」「楽観主義」と結びつけられますが、『ウィキッド』では「表面的な幸福」の象徴として使われています。

ガリンダ自身も、物語の中で「幸せそうに見えること」と「本当の幸せ」の違いに気づいていきます。

黄色いレンガ道(Yellow Brick Road)=アメリカン・ドリーム

『オズの魔法使い』に登場する「黄色いレンガの道」は、「成功への道」=アメリカン・ドリームを象徴するモチーフとして有名です。

しかし、『ウィキッド』ではその道が「本当に成功へ続いているのか?」という問いが含まれています。エメラルド・シティに向かうことが、本当に幸せに繋がるのか?というテーマとリンクしています。

ヤギ(Goat)=知性と抑圧

『ウィキッド』では、シズ大学の教授である**ヤギの「ディラモンド先生」**が重要なキャラクターとして登場します。彼は人間のように話せる知的な存在ですが、オズの国では「動物が話すこと」が次第に禁止されていきます。

これは現実世界の言論統制やマイノリティへの抑圧を暗示しています。ディラモンド先生がどうなるかを見ていると、この映画がただのファンタジーじゃないことがよくわかります。

3. ちなみにこれ、2部作だからね!

『ウィキッド ふたりの魔女』は、前編です。
続編『ウィキッド:フォー・グッド』が2025年11月に公開予定なので、1本では完結しません

前編では、エルファバとガリンダの友情や葛藤が中心ですが、本当のクライマックスは後編で描かれるので、覚えておきましょう。

4. まとめ:『ウィキッド』は鳥獣戯画である

この映画、宣伝だけ見て「子ども向けファンタジー」と思った人は要注意。実際には社会風刺バリバリの作品です。

  • 善と悪の定義は本当に正しいのか?
  • 社会的特権を持つ者はどう行動すべきか?
  • 権力と幻想の関係とは?

こういったテーマを考えながら観ると、『ウィキッド』が単なる魔法の物語ではなく、「私たちの世界」を映した寓話であることがわかります。

それでは、映画を楽しんできてください!


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