なぜ「勉強法」がこれほど注目されるのか
現代社会では膨大な情報があふれています。ビジネス書、専門書、資格試験の参考書、問題集…。どれも重要で、人生を前に進めるための知識を提供してくれるものです。しかし、多くの人が口をそろえて言う悩みがあります。
- 「読んでも頭に残らない」
- 「時間をかけて読んだのに理解が浅い」
- 「結局、読み終えたのに内容を思い出せない」
これらの問題は、単に「記憶力が弱いから」ではありません。むしろ、正しい読み方や勉強法を知らないだけ というケースが圧倒的に多いのです。
実際、教育心理学者ジョン・ダンロスキー(John Dunlosky, 2013)が行った研究でも、従来から使われている「線を引くだけ」「繰り返し読むだけ」といった勉強法は、記憶の定着にあまり効果がないことが示されています。一方で、効果的な学習法には共通点があります――それは「段階的に読む」「予習効果を利用する」「能動的に関わる」という点です。
今回紹介するのは、世界で1,105万回以上再生された勉強法動画から整理された「本の内容をスポンジのように吸収する方法」です。これは単なる暗記術ではなく、脳科学と教育研究に裏付けられた合理的なプロセスなのです。
ステップ① 全体のページをめくる ― まずは「地図」を描く
手順
- 1章ごとに最初から最後までページをめくる
- ボリュームや雰囲気を見て「ふーん」と軽く把握する
このステップは「プレビュー読み」とも呼ばれます。ハーバード大学の教育学者ダニエル・ウィリングハムは、「人は新しい知識を既存の枠組みに関連づけると理解が深まる」と指摘しています。つまり、まずは 全体像を知ることが地図の役割 を果たすのです。
たとえば旅行に出かけるとき、地図や観光パンフレットを見ずにいきなり歩き出したら迷子になりますよね。読書も同じで、全体を「俯瞰」することで、その後の学習がスムーズに進むのです。
ステップ② 章の問いかけだけを読む ― 学習の目的を設定する
手順
- ビジネス書なら章ごとの「著者の問いかけ」を確認する
- 問題集なら章末の例題だけ先に見る
- 忘れそうなら簡単にメモをとっても良い
これは心理学でいう「アクティブ・リーディング」の一部です。つまり、読む前に「自分に質問を投げかける」ことで、脳が答えを探すモードになるのです。
たとえば「この章ではなぜイノベーションが失敗するのか?」と冒頭に書かれていたら、読み進める間ずっとその答えを探そうとします。結果として、受動的な読み方ではなく「能動的な探索」になり、記憶に残りやすくなるのです。
教育心理学の研究でも、「質問を持って読むことでリテンション(保持率)が2倍以上に高まる」という報告があります(Pressley & Afflerbach, 1995)。
ステップ③ 章頭に戻り太字だけを読む ― 情報の骨格をつかむ
手順
- すべての文を読む必要はなし
- 見出し、サブタイトル、太字、トピックだけを追う
ここで得られるのは「情報の骨組み」です。人間の脳は、細部の情報よりもまず 構造を理解すること で処理がしやすくなると言われています。これは心理学でいう「スキーマ理論」に基づいています(Bartlett, 1932)。
具体的には、教科書の見出しだけを読むと「この章は定義 → 例 → 応用」という流れになっている、とわかります。骨格を理解してから本文を読むと、「あ、ここは応用の部分だ」と自然に位置づけられ、理解度が飛躍的に高まるのです。
ステップ④ 各パラグラフの最初と最後の文を読む ― 要点を先取りする
手順
- 各段落の冒頭文と結論文だけを読む
- 詳しく理解する必要はなく「予習している感覚」で十分
学術論文や教科書の多くは、「段落冒頭にテーマ文」「最後に結論や要約」という構成で書かれています。これはジャーナリズムの「逆三角形型」とも似ており、重要な情報は最初と最後に置かれる傾向があります。
この方法を使えば、全文を精読する前に要点を押さえることができます。結果として、本文を読むときに「ああ、この説明はさっきの要点を具体化してるんだ」と理解が加速するのです。
実際、教育心理学の調査でも「段落冒頭と結末を押さえるだけで記憶の再生率が30%以上向上する」と報告されています。
ステップ⑤ ようやく本文を読む ― 驚くほど頭に入ってくる
手順
- 蛍光ペンは使わず、必要なところはメモしながら読む
- 最後にじっくり本文を読めば、驚くほど頭に残る
ここに至るまでに、すでに脳は「下準備」を終えています。全体像を知り、問いを持ち、骨格をつかみ、要点を先取りしています。だから本文を読むときには、初めて触れる情報ではなく「既に知っている情報を肉付けする感覚」になります。
これは「先行オーガナイザー効果」(Advance Organizer Effect)と呼ばれ、1960年代に教育心理学者オーズベル(David Ausubel)が提唱しました。人はすでに学習した枠組みに新しい知識を関連づけるときに、理解と記憶が飛躍的に高まるのです。
さらに、蛍光ペンを使わずにメモを取るのも重要です。研究によると、線を引くだけの学習は受動的になりがちで効果が薄い一方、メモを取る行為は「生成効果(generation effect)」を生み、記憶の定着を強めます(Slamecka & Graf, 1978)。
実践者の声と共感ポイント
この勉強法を実際に試した人々からは、次のような声が寄せられています。
- 「今までよりも本の内容が頭に残る」
- 「読むスピードが速くなったのに、理解度が高まった」
- 「テスト勉強でも資格試験でも応用できる」
私自身も試してみて強く共感したのは、「時間がかかるように見えて、実は時間短縮になる」という点です。無意識に何度も読み返して時間を浪費するよりも、ステップを踏んで読む方が結果的に効率的なのです。
結論:本を「スポンジ」のように吸収する5ステップ
- 全体のページをめくって地図を描く
- 章の問いかけを読んで学習目的を明確にする
- 太字や見出しを追って情報の骨格をつかむ
- 段落の最初と最後を読んで要点を先取りする
- 本文を読んで知識を肉付けする
この流れを忠実に実践すれば、驚くほど効率よく学べます。
学習は「時間をかけること」ではなく「脳に合った方法で進めること」が重要です。あなたもぜひ次に読む本から、この方法を試してみてください。
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