「メメント」を楽しむために抑えておきたいポイント
クリストファー・ノーラン監督の名を世に知らしめた出世作『メメント』。時系列が逆向きに進行するという奇想天外な構成で観客を映画の世界に引き込み、終盤に散らばった伏線を見事に回収・ラストには「そういゆうことか」と度肝を抜かれるストーリーになっています。
何者かに襲われ妻を殺害され自らも襲われ記憶がわずが10分程度しか持たない主人公が、自分の妻を殺した犯人を追い続けます。しかし記憶が10分程度しか持たないため、過去の自分が残した写真やメモ・タトゥーなどを頼りに犯人を追っていく話です。
時系列が逆側から展開していくといった斬新な時間の見せ方によって「記憶が10分しか持たない男」の思考が見ている側も同じように体験できると同時に、観客の記憶力を試されるような難解な作品になっています。
クリストファー・ノーラン監督の名を世に知らしめた出世作『メメント』のあらすじや映画の魅力そして、映画をより楽しめる知識をまとめております。
本作を既にご覧になった方も、これから観賞される方も楽しめる内容になっています。
ネタバレはないので安心してご覧ください。
こんな人にオススメ
- ミステリーが好き
- 難解な映画がみたい
- 斬新な作品が好き
「メメント 」とは

映画概要
日本でのキャッチコピー 10分前、俺はなにをしてた?
タイトル | メメント ( 原題 : MEMENTO ) |
公開年 | 2000年 |
国 | アメリカ |
上映時間 | 113分 |
ジャンル | ミステリー・サスペンス・スリラー |
配信サービス | 配信状況 |
---|---|
U-next | ○ |
NETFLIX | × |
Amazonプライムビデオ | ○ |
Hulu | × |
※動画の配信情報は2024年4月時点のものです。配信状況により無料ではない場合があります。最新の配信状況は各動画配信サービスの公式サイトでご確認ください。
主要人物

レナード・シェルビー (ガイ・ピアース)
保険の調査員。妻は殺害され、その際に犯人を襲った時に頭を殴られた影響で、おおよそ10分で記憶が消えてしまう。
妻を殺害した犯人を復讐するため情報を集めている。
テディ (ジョー・パントリアーノ)
刑事と名乗り、レナードの犯人を探し出す協力をする男性。映画冒頭で殺害され、そこから物語は遡りながら進んでいく。
ナタリー (キャリー=アン・モス)
車検局の友人に頼み、レナードが犯人と考えている人物が乗る車のナンバーの持ち主を調べるなど、レナードの犯人を探し出す協力をする女性。
どんな映画か

ひとことで表すと時間を未来から過去へ遡ぼるミステリーサスペンスです。
襲われ妻を殺害され、さらに強盗との争いの際に頭を負傷。10分ほどしか記憶が持たなくなってしまった主人公が、ポラロイド写真に記憶のメモや体にタトゥーを入れその情報を元に過去の記憶をつなぎ、それを頼りに犯人を探し出そうとする作品です。
『メメント』は時系列が未来→過去に進んでいくパートと、モノクロの過去→未来の進んでいくパートに分かれています。この二つが交互に流れ、最後には時系列が重なり全ての点と店がつながり謎が解ける、記憶力と読解力が求められる超難解映画です。
記憶を頼りにできないの主人公の体験を追随してるような作りになっています。過去がわからないからこそ生まれる希望と無知がそのまま観客の視点となり、映画のなかに引き込まれ最後にはスッキリとゾワゾワが入り混じるような映画になっています。
時間を操る映画を撮ったら右に出るものはいない「クリストファー・ノーラン」の長編映画2作目であり、その名を知らしめた代表作です。
予備知識

2つの時間軸
メメントでは「過去から未来へと時間が進む モノクロのパート」と「未来から過去へと進むカラーのパート」の二つが交差しながらストーリーが進んでいきます。
また、結末から始まり過去へと進んでいくので、記憶障害の主人公と観客が同じ視点で、何もわからない状況から過去に遡ることで徐々に事態を理解できていくような構造になっています。
この2つの交差するストーリーと結末から始まることを抑えておけば難解な内容も理解しやすいと思います。
作品のコンセプト
「人は幸せになるために嘘をつく」というコンセプトで制作されています。
このことをベースに、主人公が記憶がないのを良いことに自分の都合の良いように利用しているのか、もしくは本当に助けるための行動か。観客も主人公と同じように疑念を抱きながらストーリーが進んでいきます。
なぜ10分で記憶がなくなってしまうのか
レナードの記憶が消えてしまう10分間。
この10分という時間設定は、アメリカのアクション映画でシーン間に挟む短いエピソードの理想とされている時間です。これは、映画を見ている多くの観客の記憶は10分ほどで曖昧になってしまうということから設定されている時間です。
メメントでは現在から過去、過去から現在へと物語が進んでいくため、観客の記憶力も試されるような作りにもなっています。
そのため、主人公と観客が同じ視点に立っていることで、主人公と観客は大きな差はないことを体感的に理解していくようになっています。
2つの恐怖
主人公は記憶がないことで2つの相反する恐怖と闘いながら進んでいきます。
・過去の自分の情報を信じ、他人を遠ざける
・確かな情報を求めて、他人を信じる
自分の情報で進むとこぼれ落ちる情報の中で正しい方向へと進めているのかの不安、一方で他人を信じることは摂取や都合が良いように操られていないかの不安が伴います。
この二つの感情を知ることで、ストーリーで出てくる葛藤や刺青まで彫って未来の自分にメッセージを残す主人公の感情も理解できるのではないでしょうか?
話したくなる豆知識

メメントの脚本が生まれたきっかけ
クリストファー・ノーランの弟であるジョナサン・ノーランが書いた短編『Memento Mori』が原案で書かれた脚本になります。
メメントは「記憶に頼ることのできない主人公の希望的観測と無知をそのまま観客の視点にするべき」と考え、ストーリーの順番通りに脚本が描かれました。
このことで脚本を読む人は内容を理解するため、読み進めては数ページ前をめくり内容を確かめ、また読み進めるといった読み方をしていたそうです。
演者の脚本の読み方の違い
主演のレナード役のピアーズはレナードの混乱を経験するため、脚本の順序通り読み進め、
ナタリー役のキャリー=アン・モスは時系列順にどう感じていたか把握するために、脚本をバラして読んでいたそうです。
難解な脚本だからこそ演じる役によって読み方が変わってくるのは、この作品ならではないでしょうか。
配給先が決まらなかった?
メメントはその難解な内容から、完成から約一年間配給先が決まりませんでした。結局、自分たちで配給会社を立ち上げて、2000年にベネチア映画祭のワールドプレミアで上映されました。その後11の映画館で上映され、多くの評判を呼び最終的には531の映画館で上映されました。
トップ10に4週連続ランクイン・アカデミー賞のノミネートされるなど、誰も予想しなかったほどのヒット作品になりました。
映画に出てくるナンバープレート
ナタリーがレナードに教えた犯人の車のナンバー「SG13 71U」は、監督 クリストファー・ノーランの母校でもあるヘイリーベリーの郵便番号からとった番号です。しかし、ノーラン監督は間違って覚えていたようで、実際は「SG13 71N」だったようです。
何事も完璧と思われるノーラン監督でも間違えることもあるんですね。

出演・監督

監督・脚本 : クリストファー・ノーラン
英ロンドン出身。子どもの頃から8ミリで撮影を始め、ロンドン大学で英文学を専攻する傍ら、16ミリ映画を製作する。初長編作品「フォロウィング」がトロントなど各国の映画祭で高い評価を受ます。2002年「メメント」で脚光をあびます。その後「インセプション」・「インターステラー」・「ダンケルク」などで時間操作というノーランのスタイルを確立します。今までの11作品すべての脚本に関わり、脚本賞を受賞した数少ない映画監督の一人です。
昔ながらの撮影手法を好み、IMAXフィルムの使用やCGをあまり使わないことでも有名です。
クリストファー・ノーラン おすすめ作品
- インター・ステラー
- インセプション
- TENET
主演 : ガイ・ピアース

イギリス生まれのオーストラリアの俳優。10代からジムに通い始め、16歳の頃にボディビル大会で優勝。翌年TVシリーズ「ネイバーズ」で主演を演じ人気者となりました。
1990年にオーストラリアのミュージシャン、ジョン・ウォーターズと共演した『Heaven Tonight』で映画デビューを果たし
1997年、ピアーズは『L.A.コンフィデンシャル』でハリウッドデビューを果たします。
ガイ・ピアース おすすめ作品
- ハート・ロッカー
- アイアンマン3
- MEMORY
「メメント」が好きな人におすすめ映画

クリストファー・ノーラン監督の作品で時間概念を題材にした3作品
二人の天才マジシャンの壮絶な争いを描いた『プレステージ』
“イリュージョン“に人生を賭けた二人の天才マジシャンの壮絶な確執を描く作品。互いの腕を尊敬しあっていたふたりのマジシャンがある事故から憎しみあい、お互いのマジックを暴くこうとする二人の確執はどんどん深くなり…。
この作品自体がマジックのような作品で、映画を見ている感覚でもありながら同時に舞台のマジックを見ているかのような作品です。
デヴィッド・ボウイやヒュー・ジャックマンなど豪華出演人も見どころのひとつです。
夢の中では長く感じる時間『インセプション 』
他人の夢の中に潜入し、その人物のアイデアや情報を盗み取ることを商売にしていた主人公。その才能から国際指名手配を受け、さらに妻の殺害容疑もかけられていました。指名手配を消すことを条件に、意識を植え付ける「インセプション」という危険なミッションに挑む。
夢をテーマにした複雑な時間軸で描いた作品で、誰もが体験したことのある夢の中では時間が過ぎるのが長く感じるというのを軸に構成されています。
レオナルド・ディカプリオと渡辺謙の共演によるサスペンス・アクションです。
相対性理論で生まれる時空の歪み 『インターステラー 』
植物の激減と食糧難で滅亡の危機に瀕した人類は、居住可能な新しい惑星を見つけ出すため宇宙へと調査に行きます。クルーの1人として選ばれた男性は、娘に必ず戻ると約束して、過酷なミッションに挑みますが…
理論物理学者の監修に入り、「相対性理論」「重力による時間の歪み」「5次元空間」など本格的な物理学を組み込んだリアルかつ難解な作品になっています。
マシュー・マコノヒーとアン・ハサウェイ共演による壮大な宇宙と家族愛を描いた作品です。
まとめ

時間を操る映画を撮ったら右に出るものはいないクリストファー・ノーラン監督の出世作「メメント」
時系列が逆向きに進行するという奇想天外な構成で観客を映画の世界に引き込み、、終盤に散らばった伏線を見事に回収・ラストには「そういゆうことか」と度肝を抜かれるストーリーになっています。
この時系列が逆側から展開していくといった斬新な時間の見せ方によって「記憶が10分しか持たない男」の思考が見ている側も同じように体験できると同時に、観客の記憶力を試されるような難解な作品になっています。
興味を持った方には是非 「メメント」ご覧になってもらいたい作品です。ぜひ次に見る映画の候補にしてみてはいかかでしょうか?
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