大人の部活、はじめました
運動神経が悪い人間は、スポーツに対して妙な警戒心を持っている。
体育の授業でのトラウマが染みついて、何かしらのスポーツを始めようとすると「自分には無理だ」と脳が先回りしてブレーキをかける。大人になればなるほど、そのブレーキは強くなる。
でも、ある日ふと「ピックルボール」というスポーツの存在を知った。
テニスと卓球とバドミントンを足して3で割ったような競技らしい。しかも「年齢や運動経験を問わず楽しめる」とのこと。
“運動音痴でも楽しめる”
そんな都合のいい話があるのか。
正直、半信半疑だった。でも、最近の自分は仕事と家の往復ばかりで、身体がなまる一方だ。体力の衰えも気になるし、ちょっと運動してみるのもいいかもしれない。
そう思い立ち、近所のピックルボール体験会に参加してみることにした。
初めてのピックルボール:コートに立つだけで緊張する
会場に着くと、意外にも幅広い年齢層の人が集まっていた。
ガチのアスリートっぽい人もいれば、明らかに運動不足の雰囲気をまとった人もいる。僕は間違いなく後者側の人間だ。
「初めてですか?」
スタッフの方に声をかけられ、うなずくと、簡単なルール説明が始まった。
ピックルボールはバドミントンコートと同じサイズで行い、ネットの高さはテニスより少し低め。パドルと呼ばれるラケットは卓球ラケットを大きくしたような形状で、ボールはプラスチック製で軽い。
「初心者でもラリーが続きやすいのが特徴なんですよ」
そう言われても、僕はピンとこない。
どんなスポーツでも、初心者のうちはミスばかりで続かないのが普通だろう。
しかし、実際にやってみると驚いた。
ラケットに当てるのは思ったよりも簡単で、ボールが飛びすぎることもない。何より、ネットの高さが絶妙に低いおかげで、ネットミスが少ないのだ。
「これなら、僕でもできるかもしれない」
そんな手応えを感じたのは、人生で初めてだったかもしれない。
運動音痴でも楽しめる理由
ピックルボールの最大の魅力は「適度な運動量」と「成功体験の積み重ね」だと思う。
テニスやバドミントンは、ある程度のスキルがないとラリーが続かない。ボールを打ってもアウトになったり、ネットに引っかかったりすることが多い。
でも、ピックルボールは違う。
まず、コートが小さいから走り回る必要が少ない。
ボールのスピードも遅めで、反応する時間がある。
さらに、ツーバウンドルール(サーブ後の最初の2回は必ずバウンドさせる)のおかげで、いきなり強打されることもない。
この「ちょっと頑張れば続く」バランスが絶妙で、初心者でも「できる!」という感覚を味わいやすいのだ。
「大人になって、こんなに短時間で成長を実感できることって、なかなかないですよね」
そう話してくれたのは、僕と同じく初参加の40代の男性だった。
たしかに、仕事では一朝一夕に結果が出ることは少ない。勉強もそうだ。
でも、ピックルボールは違う。
1時間もやれば、最初より明らかに上手くなっているのがわかる。
この「成長の見える化」が、楽しく続けられる理由なのかもしれない。
「運動は苦手」を言い訳にしないために
実は、この体験会で知り合った60代の女性がこんなことを言っていた。
「私ね、30年ぶりにスポーツを始めたの。でも、ピックルボールならできる気がして」
30年ぶりのスポーツ。
そんなブランクがあっても楽しめるって、すごいことだ。
僕は「運動が苦手だから」と避け続けてきた。
体育の授業で恥をかきたくないから、部活もやらなかった。
大人になってからは、仕事が忙しいことを言い訳に、運動をしなかった。
でも、本当は「できないのが怖い」だけだったんじゃないか。
ピックルボールを始めて、久しぶりに純粋に「楽しい」と思えた。
勝ち負けよりも「ラリーが続いた」「前より上手く打てた」そんな小さな成長が嬉しかった。
もし、僕みたいに「運動は苦手」と思っている人がいたら、ぜひ試してほしい。
ピックルボールは、そんな人の背中をそっと押してくれるスポーツだ。
おわりに:新しいことを始める勇気
ピックルボールを始めてみて、スポーツの楽しさを少しだけ知ることができた。
大げさに言えば、「新しいことに挑戦することの楽しさ」も実感した気がする。
もちろん、まだまだ下手くそだ。
でも、続けていればきっと上達するだろう。
ピックルボールは、「運動音痴だから」と諦めていた僕に、小さな勇気をくれた。
そして、その勇気は、何か新しいことを始めるためのエネルギーにもなった。
もし、今の生活にちょっとした変化がほしいなら、ピックルボールを試してみてほしい。
運動音痴の僕でも楽しめたのだから、きっとあなたも大丈夫だ。
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